■参考までに
東京都新宿区若松町3番地(都電の「若松町」電停前)にあった
「JNMC 有限会社にしき屋飛行機店」は第二次世界大戦前に創業した飛行機のソリッド模型の老舗、戦前からも「空のにしき屋」と言われるほど航空機モデルについては大手の模型メーカーでした。
▲『陸軍100式司令部偵察機』のソリッドモデルキット、当時の定価250円、郵便小包送料60円(本州)と広告にある。
▲『1954年度ベストセラー 戦艦大和』の船舶ソリッドモデルキット、当時の定価550円とある。郵便局から郵便振替で代金550円を送金する通信販売の時代の広告。
▲1960年年代になると部品構成が増えるとともに定価も値上げされた『縮尺1/40スケール 零式艦上戦闘機52型』のソリッドモデルキット、当時の定価700円、「全国有名模型店、デパートにあり」とある。全国各地に販売網が確立したことを物語っています。
1950年代のソリッドモデル黄金期が去り、1960年以降は、模型の素材は「プラスチック」へと移行して行く業界の流れを無視出来ず、
「JNMC にしき屋飛行機店」もプラスチック製モデルを発売するに至った。1960年に縮尺1/1200
「伊号58型潜水艦」を発売し、引き続いて同年
「JNMCポケット軍艦」シリーズと銘打って「戦艦大和」、「戦艦三笠」、「空母 飛龍」、「重巡鳥海」、「重巡最上」のプラモデルを同時発売した。
戦前から製造してきたソリッド(木製)モデルは、買ってくれたお客様の個人的技量、製作の腕前が必要とされたことから対象年齢は大人に限られていた。ところが、新たに登場したプラモデルは組み立てが容易であることから年齢層が低下し、子供から大人まで対象年齢が拡がった。子供たちでも簡単に模型が作れる時代が到来したと同時にソリッドモデルは衰退し、本格的なプラモデルの時代が到来した。戦前から創業して来た『有限会社にしき屋飛行機店』は1969年に46年に及ぶ長い歴史に幕を閉じた。当社はソリッドモデル時代に業界を常にリードして来たが、
田宮模型や
長谷川製作所などのようにプラモデル時代の波には乗ることができなかった。わが国の
ソリッドモデル・メーカーとして天命を全うした。
▲余談ではあるが、
『にしき屋飛行機店』への来店者の足でもある交通機関だった店舗前の「若松町」電停の路面電車である
都電13系統(新宿駅前⇔水天宮前間)はその翌年1970年に廃止された。