こちらのヴィンテージラジオは、米国のラジオ収集家のコレクションだったSONY TR-610です。
ラジオ本体の内部が英文表記であることから「アメリカ向け輸出品」だと思われます。
このソニー製ポケット・サイズのTR-610型 6石トランジスターラジオは、昭和33年(1958年)に「スピーカー付きで世界最小AMラジオ!」という宣伝文句で登場しました。それから半世紀以上が経った今日、この小さなラジオは健在です。
▼発売当時の米国雑誌のSONY広告
≪コンディション≫
チューニングは5.3から16までツマミには印字されていますが、実際は受信周波数600kHzくらい以上の受信に適応しています。
ここ東京都板橋区のオフィスでは、594kHzの『NHK 東京第1放送』は低感度でしか受信できません。
なおその他、693kHzの『NHK東京第2放送』、810kHzの『Eagle 810 AFN TOYO(横田アメリカ軍基地局)』、954kHzの『TBSラジオ』、1134kHzの『文化放送』、1242kHzの『ニッポン放送』等は快適に受信できます。
電源&ボリームのツマミにはガリもなく、音量調整は小さな音から大きな音まで快適な状態です。
≪外観の様子≫
ラジオ本体は全体的に経年劣化も少なく、トランジスターラジオ創世記の品としては綺麗で清潔感のあるビンテージラジオです。
スピーカーカバーの点々小穴にカビや錆はなく良い状態です。
スピーカーカバーの外径リングの金メッキも輝いています。
ラジオ本体の上部 ”SONY” のロゴ文字のある銅色の金属プレートの擦り傷程度で良い状態です。
ラジオ本体にはヒビ割れ・欠けはありませんが、本体の右側に数mmの窪みがありますが、割れる恐れはないようです。
ラジオを持ったり、立てたりするスタンド・アームに折れ・歪みはなく金メッキも輝いています。
金属プレートの擦り傷程度で良い状態です。
パソコンモニターの色では赤色に観えますが、実際はサーモン(紅鮭)色に近いカラーです。
《歴史&エピソード》
昭和33年(1958年)1月に米国・ニューヨークで起きた”SONY” ラジオの4,000個盗難事件で、当時すっかり話題をさらったソニーのラジオ(TR-63型)ですが、その年の6月に、TR-63型よりも一回り小型軽量になって新発売されたのが”TR-610型”であり、今日「伝説のラジオ」と呼ぶ由縁です。
この型番:TR-610には伝説のエピソードがあります。
・昭和33年1月、米国・ニューヨークの倉庫から4,000個を盗み出した盗賊は、他社のトランジスターラジオには手を着けずに”SONY”を選んでいました。
・アメリカで成功を収めた後、多くのニューヨーク市民は”SONY”ラジオは日本製でなく、「米国・New York=N.Y.製」だと思っていたそうです。当時、日本製は安くて壊れやすく、しかも見た目が悪いという日本製品の常識を打破した製品だったこと、そして”SONY”の名前の2文字”NY”は「ニューヨーク」とも読めますし、実際ソニーはニューヨークにも看板を掲げたオフィスを既に持っていたことなどから、いち早く米国国民に受け入れられた日本製ラジオだということが窺えます。
昔、アジアの小国だった日本製のソニーTR-610型は、国内よりも欧米への輸出、先行販売された。
この1958年当時アメリカの”SONY”販売代理店であったニューヨーク市の”デルモ二コ インターナショナル(Delmonico International)”社の積極的な全米向け販売キャンペーンに支えられ、このラジオの生産・販売量は飛躍的に伸びた。
この”TR-610”は日本製品の常識を打破した斬新なラジオであったことは言うまでありませんが、広大なアメリカに網の目状に電子機器の卸販売ネットワークを持つ”デルモ二コ インターナショナル(Delmonico International)”社の功績も大きいと思われます。
ソニーはアメリカに於いては1955年9月以降、”デルモ二コ インターナショナル(Delmonico International)”社との関係を打破し、1960年2月15日に”米国ソニー(Sony Corporation of America) ”設立(下の写真参照:昭和35年設立当初のアメリカ・ソニーの社内風景)するまでは独自の販売チャネルを持たなかった。
▲著作(C) Sony Corporation of America, New York1960年(昭和35年)設立当時のニューヨークの米国ソニー
よって、1958年〜1959年暮れまで、アメリカ市場で販売された”TR-610”には、日本国内とは差別化されて”デルモ二コ インターナショナル(Delmonico International)”社の特注のゴージャスで厚目の牛革の本格的ショルダーケース(バック)が付属していた。そのケースには”Delmonico International”の金箔文字がありました。
この斬新なデザインと性能の優秀さで大評判となり、1960年までの僅か2年間で、日本を含む世界各地へ50万台が売られていった。そうしたなか、海外の一流デパートや高級専門店では競ってこの”TR-610”を展示し、一時はプレミアム付きで取り引きされるほどに大ヒットした『伝説のラジオ』、この”TR-610”の成功は、今日の”Made in Japan”、”SONY(ソニー)”の名を決定的に諸外国に知らしめる役割を果たした歴史に残る『伝説のラジオ』です。
*なお、上記に記載したサイズは商品梱包出荷時の見込み重量(g)です。
Rev.:2014. 5.23 Fri.