”セイコー”とシチズン”の時計をタイマーとして、組み込んだトランジスタ・ラジオのお話し

(平成26年12月21日 更新)

ここで紹介するAM・トランジスターラジオは、SONYの”TRW-621”という6石・トランジスターラジオです。
昭和36年(1961年)の発売ですが、同年に発売された”TR-630”(時計無しノーマル品:定価6,300円)がベースとなって”TRW-621”(この型番の『W』はWatch付きを意味する:定価10,300円)が登場しました。単純計算では、その差額4,000円は時計代金ということになるのでしょうか。
”TRW-621”は素晴らしいヴィンテージ・ポケット・ラジオだと思います。



(c)ソニー:Model TRW-621時計付きラジオ/左:シチズン時計内蔵 右:セイコー時計内蔵

この6石トランジスターラジオの特徴は一流の時計メーカー品の「時計組込み」のポケットラジオであること。ただ、現在ネットオークションやフリーマーに出て来る商品の多くは、時計が破損しているか、時計は動いていてもタイマー機能は壊れています。またあるいは、時計は動いていてもラジオが鳴らない、鳴っても微かな音量しか駄目な商品が少なくありません。
あと、何を勘違いしたのか、このラジオのスピーカーカバー中央に付いている”S”字の小さな金属製エンブレム(SONYの”S”、SIX TRANSISTORの”S”)を剥ぎ取った商品も少なくない。一見、ゴミか汚れの付着物に勘違いされた人が剥ぎ取ったのかも知れません。

 ラジオに組み込まれた時計文字盤には、”SONY”と”SEIKO”が併記されているものと、、”SONY”と”CITZEN”が併記されているもの2種類があります。

 時計は電池ホルダーの下の白いプレートの裏に組み込まれいます。
時計の仕切り蓋(フタ)は、金属パーツでなくプラスチックです。
タイマーの仕組みは時計内のネジに、電極が接続され、時計に連動しラジオに通電する古典的というかアナログのギミック(タイマー)になっています。
風防に赤い三角印が、描かれていて、その風防を自由に回す事ができます。
赤い三角印に合わせた時間になると、タイマーONとなり、ラジオを鳴らす(電源が入る)機構です。
風防の外周リングを回すことにより、時刻セットする仕組みです。


▲(c)ソニー:Model TRW-621時計付きラジオの内部を覗く
セイコー、シチズン共に当時の腕時計用ではなく、機器組み込み用のゼンマイ巻上げ式のムーブメントのようです。


▲(c)松下電器:National ”T-98 Portalarm” 、デザインはソニー製品とそっくりのラジオ。

SONYの”TRW-621”の発売の翌年には、松下電器からはNational ”T-98 Portalarm” という同じくセイコーの時計を組み込み、よりゴージャスなデザインとなった類似品が発売され、北米市場では成功を収めた。

▲(c)松下電器:当時のアメリカの雑誌広告。時計とともにジュエリー(宝石)も飾り付けた型番 ”T-92 Portalarm”まで発売された。

 現在、米国やカナダのヴィンテージ・ラジオ愛好家に人気が高いのは先駆者である『SONY』の方だと思います。
米国のオークションでは、先日も400ドル近くで取引きされたこともありました。
 ポケットTRラジオにゼンマイ時計を付けた『時を刻む』、実に面白いトランジスターラジオだと思います。